従来型猫背と新型猫背について

肩こり腰痛などで施術を受けにいらっしゃる方に身体全体の疲れ方やコリハリについて説明をさせていただいています。

ちょうど参考になる記事があったので読んでみてください。

 

 

「従来のねこ背」と「新型ねこ背」の違い

 

 この時期、「熱帯夜で寝苦しい」「よく寝ても体が重い」「頭痛やめまいが続く」「顔色の悪さを指摘される」など体調が優れないという人も多いだろう。

 

 ただ、その不調は気候のせいとは言い切れない。現代人の多くが知らず知らずのうちに陥っているという「21世紀型ねこ背(新型ねこ背)」が原因かもしれないのだ。

 

 バランス整骨院代表の花谷博幸さんは、「従来のねこ背」と「新型ねこ背」の違いをこう説明する。

 

「従来のねこ背とは、高齢の女性に多く見られる『老人性円背(えんぱい)』と呼ばれるもので、加齢による骨密度の低下が原因でした。だんだん背中が丸く曲がりますが、本人は日常でそれほど痛みを感じません。一方の『新型ねこ背』は、姿勢の悪さが原因。背中が曲がるという『前後の曲がり』だけでなく、肩が内側に巻き込まれるという『左右の曲がり』が加わっていることが特徴です。肩こり、腰痛などを訴える人がほとんどで、大人だけでなく子供にも急増しています」

 

 頭痛や慢性疲労などに悩まされている人も、新型ねこ背によって呼吸が浅くなり、酸欠症状や血行不良を引き起こしている可能性が高い。

 

 左右の曲がりは「巻き肩」とも呼ばれるが、最大の原因は、現代の暮らしに欠かせない、パソコンやスマホの使用だ。画面をのぞき込むように前かがみの姿勢を日常的に続けていると、その姿勢がくせになり、体が変形してしまう。

 

 根本的な解決策はスマホやパソコンを使わないことだが、今や、それは不可能に近い。 「日本人の8割がねこ背」といわれている現代社会において、新型ねこ背はどのように改善すればいいのだろうか。

 

新型ねこ背?チェックリスト

 

 まずは、下記の簡単な「動作チェック」で自分の体の状態を確認してほしい。当てはまる項目が2つ以上あれば、新型ねこ背の疑いがある。

 

□ 大きく伸びをすると背中や肩関節などがパキパキと鳴る

 

□ 前へならえをして、ひじを90度に曲げ、ひじを体に密着させたまま両腕を外に広げた時、45度以上開くことができない

 

□ 前へならえをしたまま、手のひらを上と下にゆっくり回転させた時、上向きの方がやりづらい

 

□ 背中の後ろで手を組み、手を回転させた時、手のひらをひっくり返せない

 

□ 頭の後ろで手を組んで腕を開いた時、180度以上広げることができない

 

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 「新型ねこ背」のチェックリスト

 

2つ以上当てはまったら「新型ねこ背」の可能性大

 

ストレートネック→巻き肩→前かがみ姿勢→骨盤にゆがみ

 

 無自覚のうちになってしまっていることの多い新型ねこ背だが、そこに至るまでには段階がある。第1段階は頭が前に倒れ、本来はS字にカーブを描く首の骨がまっすぐになる「ストレートネック」の状態だ。

 

「頸椎(首の骨)は、横から見ると緩やかにカーブしているのが本来の姿。ところが、長時間パソコンやスマホを使っていると、前に出た頭を支えるために首周辺の筋肉がこり固まり、頸椎のカーブも筋肉に引っ張られて、まっすぐに変形していくのです。

 

 第2段階は、巻き肩になり胸が狭くなってしまった状態。人を真上から見た時、頭の中心と両肩の中心が一直線にあるのが正常な位置。肩が前に出た巻き肩になると胸が圧迫されるので深呼吸ができなくなります」(花谷さん・以下同)

 

 続いて第3段階では、ストレートネックと巻き肩で体の重心が前方へ移動するとバランスが取れないため、無意識に背中を後ろに引いて、重心を元の位置に戻そうとするようになる。その結果、頭や肩は体の前方、背中は後方に引っ張られた、前かがみの姿勢になる。

 

「つねに背中の筋肉に力が入っているので慢性的な肩こりや腰痛が起こりやすい。女性の場合は、バストラインが下がり、顔の皮膚がたるんで老け顔になりやすくなる」

 

 そして最終段階である第4段階では、骨盤にもゆがみが生じる。

 

「背中を丸めて重心のバランスを取り続けていると、今度は、骨盤を後ろに倒し恥骨が前に出た状態でバランスを取ろうとします。背中が丸まっている状態で骨盤が後傾すると、いわゆる“ぽっこりお腹”になり、お尻が垂れるだけでなく、腹部が圧迫されるので内臓の動きが悪くなる。さらに、股関節の可動域も狭くなるので、お年寄りのようにぺたぺたと歩くようになります」

 

脊柱管狭窄症、神経性間欠性跛行、逆流性食道炎の原因にも

 

 これだけでも充分に恐ろしい新型ねこ背だが、「脊椎の変形が進行すると歩きづらいだけではすまされない」と語るのは、脳梗塞リハビリセンター田町・三田のセンター長、村谷元気さんだ。

 

「首からお尻までつながっている『脊椎』には、運動神経も感覚神経も通っています。悪い姿勢で脊椎がゆがんで神経が圧迫されると、『脊柱管狭窄症(せきちゆうかんきようさくしよう)』などの病気になりやすい。首の骨が変形し、神経を圧迫すると手にしびれが出ることが多い。また、腰の骨が変形し神経を圧迫すれば脚にしびれや痛みが生じ、歩き続けることが困難になる『神経性間欠性跛行(かんけつせいはんこう)』につながる恐れがある。悪化すると手術が必要になります」

 

 1990年以降に急増し、今では日本人の2割に症状があるという「逆流性食道炎」も、新型ねこ背が要因の1つにあるといわれている。

 

「食生活の欧米化が最たる原因ですが、巻き肩によって横隔膜が縮こまると、それに伴い食道や胃がゆがむ。すると胃液が逆流するのです。かつては高齢者の病気でしたが、若い人にも増えています。逆流性食道炎を繰り返していると、将来的に食道がんになるリスクが高まります」(花谷さん)

 

 新型ねこ背は肩こりや頭痛だけなく、生死にかかわる大病を招きかねないのだ。

 

運動のやり方を間違っている可能性がある

 

 正しい姿勢に戻すためには、骨をゆがませている原因である“こり固まった筋肉”を、体を動かしてほぐすことが必要となる。

 

「運動は日課にしている」という人もいるだろう。それにもかかわらず、新型ねこ背の症状に当てはまったり、疲れが取れないという場合は、運動のやり方が間違っている可能性が高い。

 

 北里大学医療衛生学部教授の高平尚伸さんは、

 

「よかれと思ってやっている筋トレやストレッチが、実はねこ背を悪化させているケースもある」

 

 と指摘する。

 

「長時間座っていたり、悪い姿勢を取り続けていると、“つねに緩んだ筋肉”と“つねにこり固まった筋肉”が同時に存在する『クロスシンドローム』と呼ばれる状態になります」

 

 たとえば、スマホを見ている時、前に出た頭を引っ張り上げようとしている首の後ろ側の筋肉は、力が入り、こり固まった状態だが、首の前側の筋肉は緩み切っている。こった筋肉はほぐし、緩んだ筋肉は鍛える必要がある。むやみに筋トレをしていると、こり固まった筋肉をより緊張状態にしてしまうなど、悪化させる恐れがある。つまり、症状に合わせて正しくアプローチすることが大切だ。

 

おすすめの「壁際スクワット」と「壁際ストレッチ」

 

 そこで高平さんがすすめるのが「壁際スクワット」と「壁際ストレッチ」だ。

 

「壁際スクワットは、姿勢をゆがませる原因となっている筋肉を無駄なく鍛えることができます。呼吸を止めないことを必ず意識し、体を下げる時に息を吐き、上がる時に息を吸います。それぞれ、12秒かけて行うことを心がけましょう」(高平さん・以下同)

 

 壁際ストレッチでは、巻き肩によって圧迫された胸が開き、こり固まりやすいひざの後ろを伸ばすこともできる。

 

「スクワットとストレッチはセットで行うことで効果を発揮します。最初はきついと思うので、各23回くらいで構いません。慣れてきたら各10回を1セットにして続けると、1か月ほどで体が変わったと実感できるでしょう」

 

 自宅で胸筋と脊椎を伸ばせる運動を朝晩行い、デスクワークなどで椅子に座る時間が長い人は、1時間に1度、立たずにできるストレッチを取り入れたい。

 

「座りっぱなしでいると、『ハムストリングス』と呼ばれる太ももの裏側の筋肉がこる。ここが硬い人は、腰痛、ひざの痛み、脊椎の変形を起こしやすいのです。両脚をいっぺんにやると腰を痛めることがあるので、片脚ずつ行ってください」(村谷さん)

 

1)壁に顔と体が触れないギリギリの距離で立ち、足を肩幅程度に開いたら頭の後ろで手を組む。

 

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 手を頭の後ろで組み、お尻を突き出すようにして腰を落とした女性のイラスト

 

212秒かけ息を吐きながらゆっくり腰を落とす。この際、壁に顔とひざがつかないようにする。お尻を突き出すようにして腰を落としきったら、息を吸いながらゆっくりひざを伸ばして立ち上がる。

 

●筋肉をほぐす「壁際ストレッチ」

 

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 両手を壁につき、片脚を一歩前に、もう片方を後ろに出し伸ばした女性のイラスト

 

1)壁の角の前に立ち、両手を壁につく。片脚を一歩前に、もう片方を後ろに出し、ゆっくりとひじを曲げながら上半身を壁に近づける。この際、後ろ脚はなるべくひざを伸ばし、前脚のひざは曲げて、腰を落とす。

 

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 ひじとひざを伸ばしながら背中を丸めて下を向いた女性のイラスト

 

2)ひじとひざを伸ばしながら背中を丸めて下を向く。この時、なるべく足の位置はずらさないようにする。前後の脚を替え、同様に行う。つねに深呼吸を行うことを忘れずに。

 

●太ももの裏を伸ばす「「ハムストリングスストレッチ」

 

 

 

© SHOGAKUKAN Inc. 提供 イスに座って片脚を伸ばし、つま先を手で伸ばす女性のイラスト

 

 椅子に浅く腰かけ、片脚のかかとを床につけ、ひざを伸ばす。深呼吸しながら、ひざを曲げないように上半身を前に伸ばす。この際、背中が丸まらないよう腰から前に倒す。左右両方の脚で行う。

 

枕がは高い方がいい!枕の高さの見直しを

 

 新型ねこ背を招くのは日中だけではない。花谷さんは“枕の高さ”の見直しを呼びかける。

 

「背中も肩も丸くなった新型ねこ背の人の寝姿は、亀が引っくり返ったような状態です。日本人は、“枕は低い方が健康にいい”という考えが根強いのですが、低い枕では頭が支えられず、よく眠れません。さらに、横に寝がえりを打った時、枕が低いと体重で肩を潰して巻き肩を助長します。普段使っている枕より2倍くらいの高さにした方がいい人が、半数はいると思われます」

 

 わざわざ新しい枕を買わなくても、バスタオルを使って調整すれば問題ない。

 

「枕の下に折りたたんだバスタオルを重ねて調整します。まず横になった時、肩に負担がかからない高さに調整し、それでは上向きになった時に高すぎるなら、少し下げる。残念ながら、横向きにも上向きにもピッタリという枕はこの世に存在しません。翌朝の体調を見ながら高さ調整をしてください」(花谷さん)

 

 毎日の生活習慣で身についてしまった「21世紀型ねこ背」は、一朝一夕に劇的な改善は期待できない。しかし、現代社会での生活を続けていれば、悪化の一途をたどることは間違いない。大人も子供も関係なく、今すぐ姿勢に目を向けることが、21世紀を健康に生き抜くコツとなる。